「うちにはITに詳しい人がいないから、kintoneのようなツールは使いこなせないと思う」——導入のご相談で、最もよく伺う不安のひとつです。新しい仕組みを入れるとなれば、設定や管理を誰が担うのかが気になるのは当然です。しかし現場を見てきた立場から言うと、専任のIT担当がいない会社こそ、kintoneと相性がよいことが少なくありません。本記事では、その理由と、IT担当がいない会社が無理なく始めるための進め方を解説します。
専任のIT担当がいなくても運用できる仕組み
kintoneがIT担当のいない会社に向いている理由は、社内で「面倒を見続けなければならないもの」が少ない点にあります。
- サーバーの管理が要らない——クラウドサービスなので、機器の保守やソフトウェアの更新作業を社内で抱える必要がありません
- 画面の操作でアプリを作り変えられる——項目の追加や並び替えは、プログラムを書かずに設定画面から行えます。業務が変わったとき、現場に近い人が手を入れられます
- 「管理の型」が標準機能で用意されている——閲覧・編集の権限、申請と承認の流れ、レコードの変更履歴などが、最初から機能として備わっています
自社でサーバーを置く仕組みや、個別に開発したシステムでは、こうした部分を誰かが見続ける必要があります。「詳しい人がいないと維持できない部分」を最初から減らせることが、kintoneの大きな利点です。
「詳しい人」に頼る運用が、実は一番危うい
意外に思われるかもしれませんが、IT担当がいない会社よりも、「ITに少し詳しい社員が一人いる」会社のほうが、あとで困る場面があります。
- その人が善意で作り込み、仕組みがどんどん複雑になる
- 設定の意図や作り方が、その人の頭の中にしかない
- 本業と兼務のため、問い合わせが集中して負担が大きくなる
- 異動や退職をきっかけに、誰も触れない状態になる
これはExcelのマクロでもkintoneでも同じように起こります。kintoneは作りやすいからこそ、詳しい人が一人で抱え込むと、アプリが増え、ルールがなくなり、やがて手が付けられなくなります。担当者の退職で止まってしまったkintoneの立て直しについては、塩漬けkintoneの立て直し方で詳しく解説しています。
反対に、最初から「詳しい人がいない」前提で始める会社は、作り方をシンプルに保ち、役割を分担する体制を自然と選びます。これが、IT担当のいない会社のほうがうまくいきやすい理由のひとつです。
【目安】外部パートナーと組む場合の役割分担
IT担当のいない会社がkintoneを導入する場合、すべてを外部に任せるのでも、すべてを社内で抱えるのでもなく、役割を分けるのが現実的です。私がご支援する際の目安は次のとおりです。
社内が担うこと
- 業務のやり方と「何を管理したいか」を決める——ここは外部には決められません
- 日々のデータ入力と、使ってみての気づきを集める
- 項目名の変更や選択肢の追加など、小さな修正
外部パートナーに任せるとよいこと
- アプリ同士の関係やデータの持ち方といった、全体の設計
- 権限や承認の流れなど、間違えたときの影響が大きい設定
- 他のシステムとの連携や、標準機能で足りない部分の拡張
- 定期的な点検と、運用ルールを見直すときの相談相手
ポイントは、「業務を決めるのは社内、仕組みの骨組みを作るのは外部」と線を引くことです。どこまでを社内で担うかの考え方は、内製と外注の判断基準でも整理しています。
最初の3か月でやること・やらなくていいこと
導入直後に意気込んで多くを進めようとすると、かえって定着しにくくなります。最初の3か月は、次のように割り切るのがおすすめです。
やること
- 最も困っている業務を1つ選び、そのアプリだけを作って使い始める
- 管理者を2人決める——1人に集中させないための、最初の備えです
- アプリを作るときの最低限のルールを決める——誰が作ってよいか、名前の付け方などです
- 使ってみて不便な点を記録し、月に1回まとめて見直す
やらなくていいこと
- 全部署の業務を一度にアプリ化する
- 最初から完璧な項目設計を目指す——使いながら足すほうが、実態に合ったアプリになります
- プラグインやカスタマイズで、細かい要望をすべて叶える
- 既存のExcelをすぐに全廃する——しばらく並行して使い、慣れてから切り替えれば十分です
運用ルールの具体的な決め方は、kintone運用で最低限決めておくべきルールも参考にしてください。
まとめ——「詳しい人がいない」は、始めない理由ではなく、始め方を選ぶ理由
ITに詳しい人がいないことは、kintoneを導入できない理由にはなりません。サーバーの管理が要らず、画面の操作で作り変えられ、管理の型が標準で備わっているkintoneは、むしろ詳しい人に頼らない体制を作るのに向いた道具です。
大切なのは、業務を決める役割と仕組みを作る役割を分け、小さく始めて育てていくこと。この始め方さえ押さえれば、専任のIT担当がいなくても、kintoneは現場の道具として根付いていきます。
DX Connectでは、IT担当のいない会社のkintone導入を、業務の整理から最初のアプリ作り、社内で回せる体制づくりまでご支援しています。「何から手を付ければいいか分からない」という段階でも構いませんので、まずは今お困りの業務をお聞かせください。