便利そうなクラウドサービスは、無料で、しかも数分で使い始められます。だからこそ、気づくと業務データがいくつものサービスに分散している会社は珍しくありません。問題が表に出るのはたいてい後からです。サービスが終了する、担当者が辞めてログインできない、解約したらデータが取り出せない。本記事では、業務データを預ける前に確認しておきたい項目を、中小企業の現場で実際に使える形で整理します。

無料・格安サービスに業務データを置く前に確認すべきこと

無料のサービスが危険だという話ではありません。問題なのは、無料だと検討の手続きが省略されやすいことです。有償契約なら稟議や比較検討が入りますが、無料だと現場の判断ですぐ始まり、誰も条件を読んでいない状態で業務データが入っていきます。

起こりうる困りごとには、次のようなものがあります。

いずれも、使い始める前に数分確認していれば避けられた、あるいは備えられたものです。こうした仕組みが会社の把握外で増えていく構造そのものは「シャドーIT」を放置するリスクで扱っています。

チェック項目:データの保管場所・バックアップ・退会時の取り出し

業務データを預けるサービスには、最低限、次の項目を確認してから使い始めることをお勧めします。実務では7項目ほどのメモで足ります。

とくに4番目の書き出し手段は、使い始める前に実際に試しておくことをお勧めします。1件だけ登録して書き出してみれば、形式も手順も分かります。あとで困るのは、たいてい出口の確認を飛ばした場合です。復旧の責任範囲という観点は標準機能だけで大丈夫かという論点でも扱っており、これは有償のサービスでも同じく確認が必要な点です。

【判断基準】個人アカウントでの業務利用を避ける理由

特に避けたいのが個人アカウントでの業務利用です。無料で始めやすいぶん起きやすいのですが、次の理由から避ける判断を強くお勧めします。

判断の線はシンプルです。業務で生まれたデータが入るなら、会社名義のアカウントで契約する。無料プランでも、会社のメールアドレスで、管理者を2名以上置いて始めます。個人アカウントで始まっているものが既にある場合は、会社名義へ移すか、公式に認める仕組みに寄せるかを決める作業が必要です。

「有名だから安心」ではない。自社基準を持つ

選定の場面では「大手のサービスだから大丈夫だろう」と考えがちです。提供元の規模は継続性の目安にはなりますが、自社にとって確認すべき点が満たされているかは別の話です。大手のサービスでも、無料プランではデータの保持期間が短い、まとめて書き出せない、といった制限があります。

そこで、サービスごとに毎回ゼロから考えるのではなく、自社の基準を一度決めておくほうが早くなります。次の2段階で十分です。

この基準があると、現場から「このサービスを使いたい」と相談が来たときに、判断が数分で済みます。基準が無いまま「上長の許可」だけを求めると、判断材料がないので結局通ってしまうか、逆に何も通らなくなります。安いサービスを転々とすることの本当のコストは乗り換えコストまで含めたIT投資の考え方で整理しています。

なお、各サービスの規約・プランの条件・データの取り扱いは提供元の定めによります。仕様や規約は変わりうるため、判断の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。

まとめ——出口の確認と、会社名義での契約から

クラウドサービスの選定で最後に効くのは、機能の比較より出口の確認です。データをまとめて取り出せるか、退職者を止められるか、止まったときに誰に問い合わせられるか。この3点が押さえられていれば、たとえ選択を間違えても立て直せます。

そして、業務データが入るものは会社名義で契約する。この一点を社内の決まりにするだけで、将来の持ち出し不能や引き継ぎ不能はかなり防げます。使い始めるのに数分しかかからないサービスでも、確認に数分使う価値はあります。

DX Connectでは、社内で使われているサービスの棚卸しから、自社の選定基準づくり、会社の管理下にある仕組みへの移行までご相談を承っています。「どこから手を付けるべきか」の整理だけでも構いませんので、現状をお聞かせください。