「kintoneのアプリは10個以上あります。動いてはいるのですが、使われている感がないんです」——導入から1年前後の会社でよくいただくご相談です。日報、案件管理、問い合わせ、備品申請。どれも必要で作ったものですし、それぞれ単体では問題なく動いています。それでも社員からは「どこに何を入れるのか分からない」という声が上がる。アプリの数が増えることと、kintoneが業務の中心になることは別の話です。本記事では、アプリの寄せ集めで止まる会社と、業務ポータルに育つ会社の分かれ目を整理します。
アプリは増えたのに「使われている感」がない
アプリが増えた状態で起きるのは、機能の不足ではなく案内の不足です。実際にご相談をいただくときの症状は、だいたい次のどれかに当てはまります。
- アプリ一覧を開くと名前が並ぶだけで、どれが自分に関係あるか分からない
- 似た名前のアプリが複数あり、どちらに入れるのが正解か毎回迷う
- 入力はkintone、連絡はメール、ファイルは共有フォルダに散っている
- 新しく入った人に、毎回口頭で「この業務はこのアプリ」と説明している
これは作ったアプリが悪いわけではありません。kintoneは一つの業務課題に対して一つのアプリを手早く作れる点が強みで、その強みのまま進めると、業務の流れではなく思いついた順に機能が並びます。使う側からすると、引き出しだけが増えて地図がない状態です。
寄せ集めと業務ポータルの分かれ目は「入口」
育っている会社を見ていると、機能を足しているというより入口を一つに決めているという違いが際立ちます。具体的には次のような状態です。
- 朝いちばんに開く画面が決まっている——そこに自分の未処理と、その日見るべきお知らせが出ている
- 業務のまとまりごとに場所が分かれている——部門や案件の単位でスペースを作り、その中に関連するアプリと連絡をまとめている
- 相談と記録が同じ場所にある——「これはどう処理すべきか」というやり取りが、メールではなくその業務の場で残っている
- 迷ったときの行き先がある——手順書やよくある質問へのリンクが入口に置かれている
逆に、寄せ集めで止まる会社は、入口が人によって違います。ある人はブックマークから特定のアプリへ直行し、別の人は毎回一覧から探す。この状態では、どれだけアプリを作っても「業務はkintoneを見れば分かる」にはなりません。ポータル化とは、機能を増やす作業ではなく、散っている入口を一つにまとめる作業だとお考えください。
なお、ポータルやスペースとして使える機能の範囲や表示のカスタマイズ方法は、契約しているコースや製品側の更新によって変わることがあります。設計を固める前に、お使いの環境で何ができるかを最新の公式情報でご確認ください。
【判断基準】ポータル化に進むべき会社・まだ早い会社
ご相談を受けたとき、私がまず確認しているのは「今あるアプリが使われているか」です。使われていないアプリを束ねても、束ねた入口が使われないだけで終わります。目安としては次のように切り分けています。
ポータル化に進んでよいサイン
- 毎日または毎週、決まった人が決まったアプリに入力している業務が3つ以上ある
- 「どのアプリに入れるか」を人に聞く場面が定期的に発生している
- kintoneに入力しているのに、連絡や依頼はメールやチャットで別に飛んでいる
- 異動や入社のたびに、口頭での案内が発生している
まだ早い、先にやることがあるサイン
- 作ったけれど入力が途絶えているアプリが半分以上ある
- アプリごとに入力ルールが決まっておらず、同じ項目の書き方が人によって違う
- そもそも何のアプリがあるのか、管理している人が把握していない
後者に当てはまる場合は、先に整理が必要です。使われていないアプリの見極め方は増えすぎたkintoneアプリ、どれから片付ける?、入力ルールの決め方はルールなしのkintone運用は必ず破綻するで詳しく扱っています。順番を守るだけで、ポータル化の効果は大きく変わります。
どの順で育てるか——無理のない3段階
いきなり全社ポータルを設計しようとすると、たいてい決まりません。関係者が増えるほど「載せたいもの」が膨らむためです。現実的には、次の順で進めるのをおすすめしています。
- 第1段階:一つの部門で入口を作る——最もkintoneを使っている部門を選び、その部門のスペースに「未処理の一覧」「お知らせ」「よく使うアプリへのリンク」だけを置きます。まず一つの部門が毎朝ここを開く状態を作ります
- 第2段階:連絡をその場所に寄せる——その部門に関する依頼や相談を、メールからスペース内のやり取りに移します。ここで初めて「記録と会話が同じ場所にある」状態になります
- 第3段階:他部門へ横展開する——うまくいった形をそのまま他部門に渡します。ゼロから設計するより速く、社内に説明もしやすくなります
大事なのは、第1段階で載せる情報をあえて絞ることです。入口に情報を詰め込むと、結局読まれません。「未処理」と「今日知っておくべきこと」の2つで十分に機能します。定着しているかどうかを確かめる観点はkintone導入1年、成果は出ていますかもあわせてご覧ください。
まとめ——足すのではなく、入口を決める
アプリの寄せ集めから業務ポータルへの違いは、機能の量ではありません。社員が毎朝どこを開くかが決まっているかどうか、その一点です。アプリを追加する前に、今あるアプリへの入口が一つになっているかを確認してみてください。
まず試していただきたいのは、最もkintoneを使っている部門で「未処理とお知らせだけの入口」を作ってみることです。1か月使ってみれば、次に何を載せるべきかは現場から出てきます。
DX Connectでは、アプリの棚卸しからスペース設計、部門への展開までを一緒に進めるご支援をしています。「アプリは増えたが手応えがない」という段階でも、お気軽にご相談ください。