「来月からkintoneに切り替えます。Excelはもう使いません」——この宣言でうまくいく会社は、正直あまり多くありません。新しい仕組みに不安がある状態で退路を断たれると、現場は前に進むより身構えます。一方で「しばらく両方でやりましょう」も、放っておくと二重入力がそのまま定着します。本記事では、戻れる状態を保ちながら移行する「並行運用」の設計と、やめどきの見極め方を整理します。

「一気に切り替え」が現場の反発を生む理由

反発の正体は、新しいツールへの拒否感ではありません。ほとんどの場合、次のような具体的な不安です。

これらはどれも、現場としてはまっとうな心配です。そして並行運用は、この心配に対して「うまくいかなければ元のやり方に戻せます」という答えを用意する方法です。挑戦のハードルを下げるための仕組みであり、決断を先延ばしにするための仕組みではありません。

逆に、最初の1か月で困りごとが出ない業務なら、並行させずに切り替えたほうが早く楽になります。並行運用は、止まると影響が大きい業務に限って使うのが基本です。

二重入力を最小化する並行運用の設計

並行運用で最も嫌われるのは、同じ内容を2回入力させられることです。ここを設計せずに始めると、現場の負担が増えただけで終わります。実務では次のように組み立てます。

なお、既存のExcelをkintoneへ取り込む手順や、取り込み時に崩れやすい項目についてはわずか3分でアプリが完成? Excelからkintoneへの移行手順で詳しく扱っています。並行運用の準備としても、先に一読をおすすめします。

【判断基準】並行運用をやめてよいサイン・続けるべきサイン

「いつまで両方やるのか」は、現場からも必ず出る質問です。私がお伝えしている目安は次のとおりです。

Excelをやめてよいサイン

まだ続けるべき、あるいは設計を見直すべきサイン

とくに注意していただきたいのは、期限を延ばす判断を繰り返すことです。並行運用が長引くほど、Excel側にしかない情報が生まれ、最新版がどれか分からなくなります。この状態は「最新版はどれ?」事件簿で扱った問題が、移行の途中で再発している状態です。

「そのまま二重運用」で固定化させないために

並行運用が失敗するパターンは、ほぼ一つに集約されます。誰も終わらせる判断をしないことです。これを避けるために、始める段階で次の3つを決めておいてください。

③まで決めておくと、万一戻した場合も「失敗した」ではなく「条件に従って判断した」になります。この違いは、次に改善へ踏み出せるかどうかに直結します。定着が進まない原因の整理は「kintoneを入れたのに誰も使わない」を防ぐもあわせてご覧ください。

まとめ——退路を残すことが、前に進む条件になる

並行運用は妥協ではありません。止まると困る業務を扱う会社にとって、現実的で有効な進め方です。ただし効果を出すには、期間・範囲・判断する人・戻す条件を先に決めることが欠かせません。決めずに始めた並行運用は、そのまま二重入力として残ります。

まずは、並行させる業務を一つだけ選び、締めを2回通すまでという期限を置いてみてください。判断に必要な材料は、その2回でほぼ揃います。

DX Connectでは、移行範囲の切り分けから並行運用の設計、切替判断の同席までご支援しています。「試したいが、止まったら困る」という段階でも、お気軽にご相談ください。