kintoneを数年使っていると、こんな困りごとが出てきます。「検索すると同じ会社が3件出てくる」「使っていない項目が画面に残っていて、新しく入った人が混乱する」。いわゆるデータメンテナンスの話です。ただ、「メンテナンス」という言葉からはサービス側の計画停止を連想しがちで、自社のデータについて何をいつやればよいのかは意外と整理されていません。本記事では、点検すべき対象を4つに絞り、頻度の目安と続け方をお伝えします。
データが汚れていくのは、使われている証拠でもある
先にお伝えしておきたいのは、データが乱れること自体は失敗ではないという点です。使われていないアプリのデータは、いつまでもきれいなままです。汚れるのは入力されているからで、つまり定着している証拠でもあります。
とはいえ放置すると、確実に業務の足を引っぱります。起きやすいのは次のことです。
- 同じ取引先が複数登録され、どちらに履歴を書くか人によって違う
- 集計すると件数が実態より多く出て、数字が信用されなくなる
- 選択肢が増え続け、「その他」に集まって分類の意味がなくなる
- 使われない項目が画面に残り、新任者が「これは入れるべきか」で手が止まる
- レコードが増えて一覧の表示が重く感じられ、だんだん使われなくなる
似た論点として、アプリそのものを棚卸しする話は増えすぎたkintoneアプリ、どれから片付ける?で扱いました。本記事はアプリの数ではなく、アプリの中のレコードと項目の手入れに絞ります。
定期的に見るべき4つ
点検の対象を広げすぎると続きません。次の4つに絞るのをお勧めしています。
- 1. 重複レコード——同じ取引先・同じ案件が複数登録されている状態です。顧客コードのような一意の項目を「値の重複を禁止する」設定にしておけば新規の発生は抑えられますが、すでに溜まった分は突き合わせて寄せる作業が必要になります。寄せるときは、履歴がぶら下がっているレコードを残すのが原則です
- 2. 古いレコード——終わった案件、取引のなくなった顧客、数年前の問い合わせ。消すのではなく「現役かどうか」の区分を持たせるのが実務的です。ステータス項目や取引区分を持たせ、既定の一覧では現役だけを表示します。削除は復元が難しいため、残したうえで見えないようにするのが安全です
- 3. 使われない項目——作ったが誰も入力していない項目、別の項目と役割が重なっている項目。入力率を見れば判断できます。項目の削除はそこに入っていたデータも一緒に失われる操作なので、まずは入力欄を画面から外す・編集できないようにする、といった段階を踏んでください
- 4. 選択肢の乱れ——文字で自由入力している項目に、表記ゆれが溜まっている状態です。「株式会社」と「(株)」、「完了」と「終了」。集計のキーになる項目は、文字入力ではなくドロップダウンにし、選択肢の追加は担当者を決めて管理します
この4つのうち、業務への影響がいちばん大きいのは2番と4番です。数字が合わない・集計できないという不満の原因は、ほとんどがこの2つにあります。Excelからの移行直後に表記ゆれをそのまま持ち込んでしまい、後から効いてくるケースも少なくありません。
【判断基準】毎月やること・年1回でよいこと・外部に任せたほうがよいこと
すべてを毎月やろうとすると、まず続きません。次の3段階に分けると続けやすくなります。
毎月やること(無理なく続けられる範囲に絞る)
- 新しく増えた取引先・顧客の重複チェック(直近1か月の新規分だけ見る)
- 自由入力項目の表記ゆれの確認と、選択肢への追加依頼の処理
- ステータスが更新されないまま止まっているレコードの洗い出し
年1回でよいこと
- 項目ごとの入力率の確認と、使われない項目の整理
- 古いレコードの区分見直し(現役・休眠の付け替え)
- 一覧・グラフの設定の見直し(使われていない一覧を減らす)
- 権限設定の棚卸し
外部に任せたほうがよいと判断する目安
- 重複が数百件以上あり、人手で突き合わせるには量が多すぎる
- 項目の統廃合を伴い、既存データの移し替えが必要になる(失敗したときの影響が大きい作業です)
- 社内に手順を書ける人がおらず、担当者が代わると引き継げない
- そもそも何が正しい状態なのかを決めるところから整理が必要
判断の軸は作業量ではなく、やり直しが効くかどうかです。区分の付け替えのように後から戻せる作業は社内で十分にできます。項目の削除やデータの移し替えのように戻せない作業は、手順と退避の取り方を決めてから着手すべき領域です。この種の作業に入る前の備えはkintoneのデータ保護、標準機能だけで大丈夫?をご確認ください。
メンテナンスを続けられる体制の作り方
データメンテナンスが続かない理由は、たいてい「やる人が決まっていない」ことです。やり方が分からないのではなく、誰の仕事でもない状態になっています。続けるために必要なのは3つだけです。
- 担当を決める——アプリごとに1人、名前で決めます。部署名ではなく個人名にするのが要点です。兼任で構いません。そのぶん、毎月の作業は短時間で終わる範囲に絞ります
- 手順を1枚にする——「どの一覧を開いて、何を見て、どうするか」を箇条書きで書きます。操作画面の説明は不要です。担当が代わったときに渡せる形にしておくことが目的です
- やった記録を残す——kintoneのアプリを1つ作って、点検日と気づいたことを1行書くだけで十分です。記録があると、次の担当者が前回の判断を引き継げます
この3つを運用ルールの一部として明文化しておくと定着します。決めておくべきルールの全体像はルールなしのkintone運用は必ず破綻するで整理しています。
まとめ——戻せる作業を定期的に、戻せない作業は準備してから
kintoneのデータメンテナンスは、やることを広げるほど続かなくなります。見るのは重複・古いレコード・使われない項目・選択肢の乱れの4つで十分です。
そして頻度は、毎月は新規分の確認と表記ゆれだけ、年1回は項目と区分の見直し。項目の削除やデータの移し替えのように戻せない作業は、手順と退避を決めてから着手する。最後に、担当を個人名で決めて、手順を1枚書き、やった記録を残す。これだけで、数年使っても数字が信用される状態を保てます。
DX Connectでは、kintoneのデータ整理の進め方の整理から、重複の寄せ方・項目の統廃合といった戻せない作業の手順づくり、月次の点検を社内で回せる状態への引き継ぎまでご相談を承っています。「今のアプリの状態を見て、何から手を付けるべきか教えてほしい」という段階でも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。