「Power BIの研修を受けたのですが、自社で何を作ればいいのか分からないままです」——研修を受けたあとに、こうした状態で止まってしまうことは珍しくありません。操作の手順は学んだ、サンプルのダッシュボードも触った。けれども自社のデータを前にすると、最初の1枚が始まらない。これは理解不足ではなく、「何を作るか」を決める作業が手順の説明から抜け落ちているために起きます。本記事では、最初に作るレポートをどう選べばよいかを整理します。

操作を覚えても、レポートが作れない理由

ツールの学習は、どうしても機能の順番で進みます。データを読み込む、列を整える、グラフを置く、公開する。一つひとつはできるようになります。しかし実務では、手を動かす前に決めておくことが別にあります。

これが決まっていない状態で作り始めると、思いつく指標を次々に並べた「全部入り」のレポートになります。結果として誰の判断にも使われず、更新も止まる——いわゆる「使われないダッシュボード」の入口がここにあります。つまり、最初の1枚で詰まる原因はツールの難易度ではなく、対象業務の選び方にあります。

最初の1枚に向く業務・向かない業務

最初のレポートには、次のような業務を選ぶことをお勧めします。

向いているもの

最初には向かないもの

要するに、最初の1枚は「新しく何かを見る」ためではなく、「いま手作業でやっていることを置き換える」ために作るのが確実です。完成形が分かっているので作り切れますし、効果も説明しやすくなります。手作業の置き換えという観点は毎月のExcelレポート作りから卒業するで詳しく扱っています。

【判断基準】最初に作るレポートを選ぶ4つの問い

候補がいくつか挙がったときは、次の4つを問いとして当ててみてください。すべてに答えられる業務が、最初の1枚に適しています。

1. この数字を見て、誰が何を決めるのか
「状況を把握するため」では足りません。在庫が一定を下回ったら発注する、滞留している案件に連絡する、といった動作まで言えるかを確認します。決める人が特定できていれば、見せ方の判断も任せられます。

2. いまその集計を誰かが手作業で作っているか
作っているなら、所要時間と作っている人がはっきりします。置き換えた効果がそのまま測れるため、次の予算の話にもつながります。

3. 元データは1か所から取れるか
最初から複数システムを結合しようとすると、本題が「データ整備」に移ります。1か所で済む業務を選べば、2〜3日で形になります。

4. 止まったときに誰が困るか、どれくらい困るか
最初の1枚は練習も兼ねます。更新が1日止まっても業務が破綻しない範囲から始めるのが安全です。基幹業務の中核に最初から据えるのは避けます。

4つのうち1と2に答えられない候補は、順番を後ろに回してください。見る指標そのものを絞り込む手順は「見る数字」を絞れない会社の末路で扱っています。

作ったあと、2枚目に進む前に確認すること

1枚できたら、すぐ次を作りたくなります。その前に、2〜3週間ほど運用して次を確認してください。

なお、Power BI の画面構成や機能名、ライセンスごとに使える範囲は提供元の仕様によります。仕様は変わりうるため、具体的な操作は最新の公式情報をご確認ください。本記事は操作手順ではなく、作る対象の決め方についての整理です。

まとめ——「使い方」より先に、置き換える手作業を1つ決める

最初の1枚が始まらない原因は、たいてい操作の習得不足ではありません。見る人・決めること・元データ・止まったときの影響。この4点が決まっていないまま画面を開いているからです。

逆に言えば、いま誰かが毎月手作業で作っている集計を1つ選べば、それだけで4点はほぼ埋まります。完成形が分かっている仕事を置き換えることから始め、実際に使われて手作業が止まったことを確認してから2枚目に進む。この順番が、結果的にもっとも早く定着します。

DX Connectでは、最初に作るレポートの選定から構築、現場で直せる形への引き継ぎまでご支援しています。「何から作るべきか」の整理だけでも構いませんので、現在の集計業務をお聞かせください。