kintoneとPower BIをつなぐ方法を調べる方は多いのですが、本当に知りたいのは手段ではなく「つないだ結果、何が見えるようになるのか」であることが少なくありません。手間をかけてつないでも、出てくるものがkintoneのグラフと変わらないなら意味がないからです。本記事では、kintoneのデータをPower BIで見ると具体的に何が分かるようになるのかを、活用例から整理します。
kintoneの標準グラフで見えること・見えないこと
先にはっきりさせておくと、kintoneの標準グラフは必要十分な場面が多いです。1つのアプリの中で、件数を数える・金額を合計する・担当者別や月別に分けて見る、といった用途なら、わざわざ外に出す必要はありません。グラフの設定もアプリの画面内で完結します。
一方、次のような見方になると標準グラフでは組みにくくなります。
- 複数アプリをまたいだ集計——案件アプリと日報アプリ、問い合わせアプリの数字を1つの画面で並べる
- kintone以外のデータと合わせる——会計システムから出した実績や、Excelで管理している予算と並べる
- 期間をまたいだ推移の比較——前年同月との差、過去24か月の推移といった見方
- 割合や指標の計算——受注率、平均対応日数、1件あたりの単価など、元の項目には無い数字
- 見る人が自分で絞り込む——部署や期間を切り替えながら同じ画面を見る
Power BIを使う価値が出るのは、だいたいこの5つのどれかに当たったときです。逆に当たらないなら、kintoneの中で済ませたほうが速く、保守も楽です。
活用例——案件の進み具合・問い合わせの傾向・アプリをまたいだ集計
形にしやすいのは、次のような見方です。
- 案件の進み具合を段階ごとに見る——商談の段階別に件数と金額を並べ、どの段階で止まっているかを把握します。先月末との比較を入れると、動いていない案件が浮かび上がります
- 問い合わせの傾向を分類で見る——問い合わせアプリの内容区分と件数の推移を並べ、増えている種類を見ます。同じ質問が増えていれば、案内資料やFAQを直す判断材料になります
- 対応にかかっている日数を見る——受付日と完了日の差を平均・最大で出し、担当者別や月別に並べます。「忙しい」という感覚を日数に置き換えられます
- 複数アプリを1枚にまとめる——案件・問い合わせ・日報を1つのレポートに並べ、会議の冒頭で同じ画面を見るようにします。資料を作る作業がなくなります
- 予算や計画と並べる——kintoneの実績と、Excelの予算表を同じグラフに重ねます。kintoneの中だけでは組みにくい見方です
ここで挙げた例に共通しているのは、「数字を出すこと」ではなく「次の行動が決まること」を目的にしている点です。止まっている案件が分かれば声をかける、増えている問い合わせが分かれば資料を直す。見ても行動が変わらない数字は、並べても使われません。活用例を選ぶときは、「これが見えたら誰が何をするのか」を先に一言で書いてみてください。
【判断基準】Power BIまで使う価値がある場合・kintoneの中で足りる場合
次の観点で切り分けると判断しやすくなります。
Power BIまで使う価値が出やすいのは、こういう場合です。
- 見たい数字が2つ以上のアプリ、またはkintone以外のデータにまたがっている
- 毎週または毎月、同じ集計のために誰かが手作業で資料を作っている
- 前年比や達成率など、元の項目には無い計算をして見たい
- 見る人が複数いて、それぞれ自分の部署や期間で絞り込みたい
kintoneの中で足りることが多いのは、次の場合です。
- 見たいのが1つのアプリの件数・合計で、分け方も担当者別や月別で足りる
- 見る人がほぼ1人で、その場で条件を変えながら確認している
- レコードの一覧を見ながら個別に判断する使い方が中心(集計より検索が目的)
- データの入力自体がまだ安定していない(抜けや表記のばらつきが多い)
最後の点は見落とされがちです。入力が揃っていないデータを外に出すと、見栄えのよいグラフで間違った数字が共有されます。まずkintone側の項目と入力ルールを整えるほうが先です。この順番についてはPower BIのグラフがおかしい原因は、だいたい「元データ」にあるで整理しています。
自社に合う活用例が見つかったら、次に決めること
見たい形が決まったら、順番としては「どの1枚から作るか」を決めてから、つなぎ方を選ぶのが手戻りが少なくなります。先に接続の仕組みを整えても、何を見るかが決まっていないと、結局使われないレポートができます。
最初の1枚の選び方はPower BIで最初に作るべきレポートは何かで、kintoneとPower BIの具体的なつなぎ方と選択肢はkintoneのデータをPower BIで見たい——連携方法の選び方で扱っています。本記事では繰り返しません。
なお、kintoneおよびPower BIの機能・接続方式・ライセンスの条件は提供元の仕様によります。仕様は変わりうるため、具体的な構成を固める段階では最新の公式情報をご確認ください。
まとめ——「見えるようになること」から逆算する
kintoneとPower BIをつなぐかどうかは、技術の話として考えると判断がつきません。判断がつくのは、「何が見えるようになると、誰の行動が変わるのか」を先に書き出したときです。
複数アプリをまたぐ集計、kintone以外のデータとの突き合わせ、前年比のような計算、絞り込みながら見る使い方。このどれかに当たるなら、Power BIを使う価値があります。当たらないなら、kintoneの標準グラフで十分です。まずは手作業で作っている資料を1つ選び、それをPower BIで置き換えられるかから考えてみてください。
DX Connectでは、kintoneのデータを使った分析の切り口の整理から、レポートの設計・構築、社内で運用できる形への引き継ぎまでご相談を承っています。「自社のkintoneから何が見えるか」の見立てだけでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。